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パリ協定を持ち出すまでもなく、2050年に水素ベースの社会が実現できていなければ、温暖化が進み地球は悲惨な状態に陥っているだろうことに異論はないでしょう。日本の水素基本戦略によれば、2030年には海外から水素の輸入が始まり、原発1基分相当の発電が行なわれることになっています。燃料電池車に換算すると年間500万台分を賄える、大量の水素を運んでくるわけです。そうなれば、水素コストが下がり、普及に弾みが付くことは理解できます。では、それまでの間、どの様に技術を磨いていけばよいのでしょうか。これまで明確な指針は示されて来ませんでした。
本レポートでは、まず温暖化対策のために水素利用が避けて通れないことを解説します。次に、国内サプライチェーンを想定して試算した「水素コスト」を物差しに、水素が街中に普及するためのシナリオを提示します。また、水素の利活用で一歩先を行く欧米豪の企業やプロジェクトの取材を通し、世界の本気度を展望します。次世代エネルギーとして水素に大きく踏み出した中国に関しては、その実像を明らかにすべく現地有力シンクタンクとの共同研究を行ないました。さらに、水素社会を構成する広範囲にわたる関連技術を網羅し、これらをわかりやすく解説。特に、既存技術を置き換えるゲームチェンジャーとなり得る“人工光合成”については、そのプロジェクトリーダー自らが詳説しています。
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